一般的な家庭でのパンのレシピは、「よくこねて」「グルテンをたくさん作って」「モチモチのパン」のレシピが多いと感じます。
でも、パンをいろいろ知っていくうちに、パンは捏ねないことも大切だと気づくことがあります。
特に、今回紹介する高加水パンは捏ねずにまとめることで「バリッとした食感」と「歯切れのよさ」を出すことができます。
なかなか家庭用で高加水パンのレシピが少ない中で、その作り方と理論を今回はご紹介していきたい思います。
材料
- 強力粉 (65%) 130g
- 薄力粉 (35%) 70g
- イースト (0.5%) 1g
- 塩 (2%) 4g
- 水 (78%) 156g
(ちなみに粉は準強力粉や中力粉に置き換えてもOKです。水分は生地の固さを見ながら調節してください)
生地のポイント
軽い食感を出すために薄力粉と強力粉をブレンド
ハード系のパンを作るときは通常フランスパン専用粉を使うことが多いです。
今回のレシピでは誰でも作りやすいことを念頭に置いて作ったので、スーパーで手に入る強力粉と薄力粉をブレンドして、フランスパン専用粉のように使っています。
薄力粉が入るとモチモチ成分のグルテンが少ないので、さっくり軽い食感に仕上げることができます。
生地は折って重ねてまとめる
小麦粉は水を加えてこねるともっちりする成分(グルテン)がたくさん作られます。
この生地の目標は軽くてさっくりした食感なので、こねる作業を最小限にして、折って重ねることでまとまりを作っていきます。
この作業が高加水パンの特徴とも言えます。
生地を休ませることで繋がりを作る
生地のつながりはこねる以外に休ませることで作ることができます。
グルテンは作りたくないけど、つながりは作りたい生地なので、休ませる作業がキーポイントになります。
休ませる意味を理解するとよりパン作りについての認識が増えると思います。
作り方
ミキシング
まずはボールの中に水を入れその中で塩を溶かします。
ボールの中に1/3量の粉を入れてペースト状になるまで混ぜます。
(このとき、一気に粉を入れるとダマになりやすいのでそれを防止するために数回に分けて入れます。)
馴染んできたら、また1/3量加えて混ぜ、ペースト状にしていきます。
粉が全て入ったら、生地を伸ばして2つにたたんでボリュームを出していきます。
このたたむ作業を15回くらい繰り返すと固さが出てきます。
固さが出てきたら、生地を休ませていきます。
中にホコリなどが入らないように濡れ布巾などを被せておきましょう。
生地を休ませる(20min)
生地を休ませると、水分が均一に行き渡るようになり、生地のつながりができるようになります。
そのため、休ませた後にの生地は水っぽい質感でよく伸びるようになっています。
ここで、繋がった生地をより強くするために、再度伸ばして折っていきます。
生地を10cmほど持ち上げて中心にのせます。
これを20回ほど繰り返してボールのような形にしていきます。
生地に立体感が出てきたら、また生地を休ませます。
生地を休ませる(20min)
休ませた生地は表面に光沢があり、さらに伸びるようになっていると思います。
ここまでできたら、冷蔵庫で生地をじっくり発酵させていきます。
動画では、タッパーに移して寝かせていますが、ボールのままでももちろんOKです。
(ボールごと入れると冷蔵庫がいっぱいになってしまうので、今回はタッパーに移しました。)
長期冷蔵発酵(4~8度:8~12時間)
発酵は温度が高いほど進むのが早いのですが、旨味や風味を作るには低温で時間をかけたほうがいいとされています。
また、温度の調節をすることでパンを焼くタイムスケジュールも組みやすくなります。
単純に作業を2分割してできるので、前日仕込んで次の日すぐに焼くことができるのもメリットの一つですね。
分割(5個)
発酵が終わった生地は冷たいままでいいので分割と成形をしていきます。
生地は水分が多くくっつきやすいので、パンマットや布巾などに打粉をしてくっつかない場所で作業をしていきましょう。
このときの注意点は生地の中の気泡をなるべく抜かないことと、生地は優しく扱うということです。
ここで気泡が抜けてしまうと焼いてもボリュームが出なくて残念な仕上がりになってしまいます。
そして、生地を取り出すときは淵に打粉(強力粉)を振るって淵に落とし込むようにしてカードで落としていきます。
容器をひっくり返せば気泡を残したまま生地を取り出すことができます。
生地は目分量でいいので5個に分割します。
ここでは大きさを揃えるよりも、生地を傷めないということが特に大切になります。
成形
高加水パンは引き締まるだけのグルテンの力がないので、ベンチタイム を置くことなく成形ができます。
成形時は生地が手につかないように打粉をしっかり使いましょう。
生地の4つの角を中心に向かって折っていきます。
(丸くて角がわかりにくいときは、折ったところの対角線上の生地をおるといいでしょう。)
この中心に向かっておるのを3回繰り返して、丸く立体感を出していきましょう。
3回目が終わった時に、折り目は開かないようにきちんとつまんで閉じておきましょう。
閉じたところを下にして天板の上に並べておきましょう。
二次発酵(35度: 20min)
生地を二次発酵させる時にはラップや濡れ布巾をすると、生地がくっついてしまうので、必要ありません。
また、グルテンの力が弱くガスを溜め込む力も弱いため二次発酵の時間も短めでOKです。
二次発酵の時間が終わったら、生地の中心に一本切り込みを入れておきましょう。
焼く直前で生地の霧吹きをして表面をしっかり湿らせておきましょう。
焼成(230度 :20~25min)
生地がオーブンで加熱させると、その温度の上昇に伴ってイーストの活性が上がるので、生地中にガスが増えていきます。
イーストの活性のピークを二次発酵でなく焼成に持って来ることで、焼いた時に大きく膨らむようになります。
また、60度を過ぎてイーストが死滅した後も、100度の地点で生地中の水分が蒸気に変わるので、そこでもボリュームがでることになります。
一方、水分を含んだ小麦中のデンプンは加熱とともに柔らかいゲル上になります。
生地の表面がゲル上である以上、内側の空気が膨張した時にはきちんと膨らむようになります。
生地の表面が焼けて固まってしまうとふくらまなくなるので、焼く直前に生地を濡らしておくことでより膨らみをよくしていきます。
そして、乾燥しやすい生地の表面が先に固まり、切り込みを入れた切り口は柔らかいので、そこの切り口をきっかけに生地が大きく膨らむようになります。
これがクープが開くという現象です。
つまり、クープが綺麗に開く条件としては、
イーストの発酵のピークが焼成の時に合っていること
生地表面がきちんと水分を含んでいること
(特に切れ目のところに水分を含んでいること。)
が大切になります。
そのため、オーブンにスチーム機能があればなおさらクープは開きやすくなります。
(生地の表面のゲル状態を長くキープできるので。)
仕上げ
あとはお好みであんことバターなど好きな具材を挟んで完成です。