突然ですが、世界で一番広い範囲で生息している植物が何かご存知でしょうか?
それは小麦と言われています。
古代の人類が狩猟生活から農業革命によって農作をするようになってから、小麦はずっと人類と一緒に世界中に広がっていきました。
小麦が野生だった頃はごく一部の地域に生えているだけの「草」に過ぎなかったのですが、人類が長い年月をかけて、病気に強いものや、たくさん穂をつけるものを選んで育てていった結果、多くの人類の胃袋を満たす重要なエネルギー源になっていきました。
食べ物を安定して供給することは、人類の発展になくてはならないものでした。
小麦アレルギーの原因とは
長い歴史の中で生活を共にしてきた人類と小麦ですが、人によっては小麦が体質的に合わない人もいます。
その原因の一つとして、品種改良を重ね過ぎたことが言われています。(※諸説あり)
人類にとって都合のいい遺伝子だけを集めて作った、偏った染色体をもつ小麦に対して一部の人は過剰に反応してしまい、それがアレルギーの反応として出てしまうのです。
本来、免疫機能とは自己防衛のための反応ですが、アレルギーのように免疫が過剰に反応しても害があるのです。
スペルト小麦とは何か?
スペルト小麦とは、今ある小麦のご先祖に当たる古代種の小麦です。
紀元前6000年前ほどに今のイランで発生した小麦とされていて、ほとんどその遺伝子のまま現代まで残っています。
つまり、人為的な品種改良をほとんどされずに現代に残っている品種の小麦なのです。
よって、この小麦を使った食品なら一部の小麦アレルギーの人が症状が出にくかったり、全く出なかったりするのです。
また、栄養価も高く最近になって注目を集めている小麦でもあるのです。
スペルト小麦を使ったパンの特徴
スペルト小麦で作ったパンは口当たりが軽く、穀物の香りが感じられる素朴な味わいのパンができます。
スペルト小麦は外皮が剥がれにくくて製粉しにくい品種なので、小麦粉全粒粉のような風味が感じられるパンができました。
パンを作った使用感としては、水分をよく吸ってまとまりやすい生地ができます。
スペルト小麦のタンパク質量はおよそ11%前後で、その内訳としては、通常の小麦よりもグリアジンの比率が多いので、できた生地はぺちゃんとしてコシがない感じです。
コシがない分、ボリュームを出したパンを作りたい場合は、パンチの回数を多くしたり、焼成時は高温でスチームを入れるなどして高さをだす工夫が必要です。
私が作った感覚としては加水率が65%くらいが一番扱いやすいと感じました。
また、スペルト小麦は自己消化酵素の活性が強いので、あまり発酵時間を長くしたり、温度を長くするとデンプンが溶け出して、でろでろにとろけてしまうので注意が必要です。
しかし、その分発酵も早く、グルテンの給水の非常に良いのでしっとりしたパンが短時間でできる小麦粉という印象が強いです。
レシピの参考例
材料(Baker’s%)
丸パン5個分
スペルト小麦(100%)
イースト(1%)
砂糖 (8%)
塩 (2%)
水 (65%)
サラダ油
200g
4g
4g
4g
130g
10g
スペルト小麦の弱点
仕上がりのパンはとても美味しく、パンも作りやすい小麦ですが、いくつか不便な点もあります。
1、手に入りにくい
まだまだ流通している量が少ないので、一部の専門店でしか購入できなかったり、インターネットで取り寄せる必要があります。
2、金額が割高
スペルト小麦は、1kgでおよそ2000円くらいします。一般のパン用小麦粉と比べると4倍くらいの金額がします。
流通している量が少ないのと、製粉に手間がかかることが原因だと感じます。
まとめ
製パンの材料としても、製菓の材料としても優秀な小麦粉なので、もっと多くの人に知ってもらいたいと思います。
色々な点でスペルト小麦のパンは大量生産できないできないので、手作りをする人にこの知識があれば、もっと多くの人にパンを食べてもらう機会が開けると思います。
一般的な需要なそこまで大きくないと思いますが、ごく一部の困っている人を助ける手段の一つがこのスペルト小麦だと思うので、その存在だけでも心に留めておいてほしいと思います。