角食パンが焼きあがって蓋を取った時に、ぴっちりと角が立っていると、快感に似た満足感がありますよね。
反対に焼き上がりに角がなく、むしろ天井にさえつくことなく焼きあがった食パンはカッコ悪くて、とてもショックを受けます。
せっかく時間をかけて、手間をかけて作った角食パン。誰もが失敗なく綺麗に作りたいと思うことです。
この記事では食パンの角が出ない原因と釜伸びの原理について考えていきます。
原因1、こね不足
釜伸びしない原因の9割がこのこね不足にあると私は感じます。
例えば、
「一斤型の時は角が出るのに、1.5斤は角が出ない」
「普通の食パンは角が出るのに湯種食パンだけは角が出ない」
などの悩みは、全てこね不足が原因です。
大型のパンが釜伸びしにくいとき
こねる粉の量が多くなればなるほど、こね時間が長くなるのことは当たり前のことです。生地がまとまってきても、グルテンがきちんとできているとは限りません。多い生地ほどグルテンのつながりにはムラができやすくなります。
こねあがりのチェック方法としては、グルテン膜のチェックの基準をいつもより厳しくして、とても薄い膜が綺麗に張るまで辛抱強くこねることが大切です。
なぜなら、小型のパンでは、そこまで強いグルテン膜ができていなくても、内側のガスが生地を押し出す力がそこまで強くないので、なんとか膨らむことが多いです。
しかし、パンの大きさが大きくなればなるほど、閉じ込めているガスの量が多くなるので、生地を押し出す力も当然強くなります。
その分大型のパンのグルテンは薄く、しなやかに、強いものに仕上げる必要があります。
原因2、湯種食パンが膨らまない
湯種食パンに限らず、ライ麦や全粒粉を配合した食パンが膨らまないという悩みを抱えている人は多いと感じます。
小麦粉以外のグルテンを作りにくい(もしくは全く作らない)素材を配合する時は特に、グルテンのつながりができにくく、ボリューム不足になりがちです。
ここでの解決方法もただ一つ。
よくこねること。
以上です。
まず湯種は原料が小麦粉ですが、熱湯をかけて作るために小麦粉のグルテンが壊されてしまいます。
つまり湯種のグルテンは繋がることができないのです。よって湯種の分量だけ、通常よりもグルテンが少なくなるので、湯種の配合比が高くなればなるほど、ボリュームが出にくく、どっしりした食感になるのが湯種食パンです。
でも、このグルテン不足もこねればこねるほど繋がっていきますが、時間がかかります。湯種を使った食パンは機会こねでも30分以上かかることがほとんどです。
だから、手ごねの場合はもっとかかるのは当然なことです。ちなみに湯種の配合50%までなら十分に釜伸びするパンはできます。(こねるのは大変ですが…)
釜伸びの原理
パンが釜伸びをするのは、イーストの発生させるガスとそれを閉じ込めるグルテン膜の二つが関係しています。
逆を言えば、その二つさえ理解していれば釜伸びをマスターできます。
まず、ホイロ(最終発酵)が終わったパンはグルテンが程よく緩んでいる状態で、発酵状態は一次発酵よりもボリュームを出さないで仕上げるのが一般的です。
その生地がオーブンに入ることで少しずつ生地の温度が上がってきます。
その時に1回目の釜伸びがおきます。
イーストは約50度までは発酵をするので、オーブンに入れると温められて発酵して、さらに膨らみます。そして60度を過ぎた時にはイーストは死滅して1回目の釜伸びは終わります。
ちなみに、ここでの膨張が一番膨らみます。
また、オーブンでの加熱は外側から口側に熱が伝わるので、外側の生地が加熱により固まっても、内側のイーストは発酵を続けているので、膨張は続きます。パンにホワイトラインやひび割れができるのはこのためです。
そして、二度目の膨張はガスが温められて膨らむことでおきますが、これはほとんどパンの大きさには影響しないそうです。
まとめ
つまり、ガスを保持できるグルテン膜が表面にも、内側にもしっかりと作られていることが、ボリュームよく釜伸びさせる一番のポイントになります。
大型のパンや湯種などを配合したパンはよくこねること。薄い膜が張るまで根気よくこね続けることが釜伸びするパンには不可欠なのです。
ちなみに一次発酵でも膨らみが悪い場合は、イーストの状態を疑った方がいいでしょう。
イーストが古いか、発酵温度が低すぎるか、逆に温度が高いかをチェックしてみましょう。